前編は以下のとおり
好きだった大学の先輩が・・・
好きだった大学の先輩が・・・続編
その晩。Aから電話。「今ヒマ?」晩飯の誘いだった。実際ヒマだったし、この間のことを、いつかはきちんと聞かなきゃと思っていたから誘いに乗った。
呼び出されたファミレスにはAが一人でいた。いつも軽薄そうにヘラヘラしてるAは、珍しく何やら難しそうな顔をしていた。
席につき、微妙な空気な中食事もそこそこ進むと、Aから核心を切り出してきた。
「なぁ?お前ヒカルちゃんと付き合ってんの?」
俺は無言で首を横に振った。
「ふぅん。じゃあもしかして好きなん?」
一呼吸置いて、黙ったまま頷いた。
Aは、それを見届けると額に手をあて、「マジかー。」とうな垂れた。
顔を上げると、「悪かった。マジで。」と、罰が悪そうに謝ってきた。
俺はそれを聞いて、間違いじゃなかったんだと悟り、何か自分の中で糸が切れてしまい、涙をこぼしてしまった。あんまり俺が泣きじゃくるから、Aは俺を外の公園に連れ出した。
この話には関係ないが、ファミレスには知り合いがバイトしてて、俺とAがゲイカップルという噂も広まったらしい。勿論半分冗談だったんだろうが。
とにかくベンチでうなだれて座っている俺に、Aは缶コーヒーを買ってきてくれた。しばらく俺達は無言のままだった。
俺はなんとか声を振り絞って、「いつから?」とだけ呟いた。Aは頭をガシガシ掻き毟ると、「……結構前から。」と申し訳なさそうにいった。
「なんで?」
「酒飲んでて……それで。」
また長い沈黙。俺はただでさえ屈んで座っていたのに、自分の膝に顔を埋めるように、ベンチの上で体育座りをした。Aが口を開いた。
「最初はさ、○○先輩っているだろ?4年の。もう引退してるけど。俺あの人と仲良いから家で飲んでたんだよ。そしたらヒカルちゃん家に呼んでさ、最初は普通に飲んでたんだけど、俺いつの間にか寝ちゃっててさ、そんでなんか目覚めるとと、やってたんだよ。二人。前からセフレだったらしいけど。そんで俺ビックリしたんだけどさ、なんか○○先輩が一緒にやろうぜ、って。」
Aは淡々と話そうとしてたんだろうが、その声は少し震えていた。
俺は黙って聞いていて、Aは続けた。
「で、俺とヒカルちゃんはそれから。でもさ、あの人結構してるらしいぞ? うちの学校じゃ○○先輩と俺と、あとBだけだけど、あ、Bもまぁ似たようなきっかけだったんだけど、他の学校の人とかと、ほらヒカルちゃん人気あるじゃん?そういう人とかと、あとバイト先とかでは結構……らしいぞ。彼氏はずっといないっぽいけど。」
涙はもう止まっていたけど、俺は信じたくなかった。
「そんな人じゃない!」と鼻水垂らしながら言った。
Aは困ったように、「ああ、まぁ、なんつうか、わからんけどさ。」と言葉を濁すと、俺の顔を覗き込むように、「実際お前らどうなの?どんな感じなん?」と聞いてきた。
「わからん。でも付き合えると思ってた。」
Aは大きく溜息をつくと、
「……別にそこまでお前と仲良くないしさ、どうでもいいっちゃどうでもいいけど、止めといたほうがいいと思うぞ?だって今も○○先輩のとこ行ってるし。ヒカルちゃん。」
それを聞いて、心臓が止まるんじゃないかってくらい動悸が激しくなり、目をつむると、上下の平衡感覚が一切無くなったかのように頭が揺れた。
しばらくベンチで座り続けた。多分30分くらい。
Aも黙って横に座り続けてた。
やがて口を開くと、「本当はさ、俺も誘われたんだけど、なんか気になったから断った。でも多分代わりにBが行ってると思うわ。」
Aはずっとしょげたままの俺の肩を叩き、「まぁ女なんて腐るほどいるからさ、そういう事もあるって!」と慰めてきた。
「なんなら紹介してやっからよ。」とも。
我ながら情けないことに、いつまでも女々しい俺は、「ヒカル先輩以外考えられない。」と子供のように駄々をこねた。
Aは何かを言って、立ち去っていった。何を言ったのかは聞き取れなかった。
「まぁがんばれよ。」とかそんなんだったと思う。
それから俺はゾンビのように夜の街を、目的もなくふらふらとさまよった。
いつの間にか、俺は○○先輩のアパートの前まで来ていた。
何度もチャイムを鳴らすかどうかを迷い、そして思いとどまり、その近所をぶらつくという事を何度も繰り返した。
○○先輩の部屋は丁度一回の角部屋で、でも明かりは着いてないように思えた。
カーテンも閉まっていた。
その時の俺は、もう一般常識における善悪の判別が出来るには、ほど遠い精神状態で、結果からいうと、生垣を超えて、○○先輩の部屋の裏庭へ侵入して、そこで聞き耳を立ててしまった。
中からは薄っすらと女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
それがヒカル先輩のかどうかはわからなかった。
元の声がわからないくらい、それは高くて、激しくリズミカルだったから。
でもその声の主は、喘ぎ、そして自分がイクことを知らせる合間に、時折Bの名前を呼んで、何度も何度も自分からBのセックスを褒めるような素の口調が聞こえてきた。
それは、明らかに自分が好きな人のものだった。ちなみにBはヒップホップ系のデブで、色んな意味でドラゴンアッシュのDJにそっくり。
ずっと聞き耳を立ててた。
逃げたいとか、そんな気持ちすらなくて、ただ立ち尽くすしか出来なかった。
やがて喘ぎ声が聞こえなくなったのだが、それでもベッドが激しく軋む音と、肉がぱんぱんとぶつかる音は聞こえてきて、やがて「じゅっぷじゅっぷ」と、まるで飴をいやらしく舐めるような音と、その合間に、息継ぎをするような音も聞こえてきた。
俺のちんこは、いつの間にか完全に萎えていた。
中からは、Bの「やっべ。いきそ。いっていい?」と野太い声と共に、ベッドが軋む音と、喘ぎ声の激しさが加速していき、そしてその音が一斉に、そして同時に止まった。
その直後、おそらく二人分の荒い息遣いだけが聞こえてきとかと思うと、聞きなれた○○先輩の「おい早くどけよ。」という声が聞こえてきて、ぎっぎっとベッドの上で人が移動する音が聞こえてくると、
やはり聞き慣れた好きな人の「えー、ちょっと休憩しよーよ。」という声が聞こえてきた。その後、ベッドの軋む音と、喘ぎ声が激しく再開した。
喘ぎ声の主は、何度も「すごい」と「いいよ」を交互に連呼していた。
それも、Bの「ちょ、俺のも舐めてよ。ああすげ。そうそう。綺麗に。」という声を境に、くぐくもった喘ぎ声に変わった。
俺は自分がすごい惨めになってきて、その場所を離れた。泣きじゃくりながらも、ちゃんと歩いて帰った。こんな時でも、意外としっかり歩けるんだなと、自分で可笑しく思った。(次回へ続く)
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せつね~
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