俺が最初に就職したのが、予備校だった。
教員免許は国語なんだが、数学の講師が不足しているということで、数学を教えることになった。予備校だから、別に免許も必要なくて、何を教えても良いわけだ。
職員室があって、たいてい俺たちはそこにいるんだが、そのほかに事務室があった。
事務員は女性二人、一人は大卒で去年入社したという由紀(仮名)、もう一人は入社8年目の良子(仮名)、二人はそこにこもりっきりで、生徒達の成績管理とかを主な仕事としている。
で、成績のことを聞きによく出入りするんだが、紙を節約ということで、モニターをのぞき込む習慣になっていたわけだ。個人情報でもあるし。
俺は何の気なしに由紀のモニターをのぞき込む。必然的に顔が近づくだろ? 良い香りがする訳よ。襲いたくなるような衝動。
15センチのランデブーだな。由紀がすごい意識をしているのが手に取るようにわかるんだけど、俺は興味がないふりをして、わざと接近するんだ。
ホントはべったりとしたいのにな。事務室を出ようとすると、由紀の息が荒いわけだよ。俺も密かに嬉しいわけだ。
そんなことが何度か続いた5月。予期せぬ出来事が起こったんだ。
いつも通りに由紀の顔に近づいて画面をのぞき込んでいるとき・・・。
後ろから殺気・・・。俺の後ろ。
「ちょっとぉ、近づき過ぎじゃない?あんたたち、出来てんの?」
良子の声。
俺は腰を伸ばして立ち上がると、良子が俺の顔のそばに顔を寄せてくるんだよ。
30歳近くなった女って、やばいよな。すごい勢いを持っている。
この良子、一昨年離婚して、子供は実家に預けながら、昼間はヤクルトおばさん。夕方からこの予備校に来てるわけ。旦那も逃げるわな。美人なんだろうけど、性格がきついよ。
「こんなに顔を近づけて、どういうこと?それも毎回」
由紀がおどおどしてる。こりゃ、やばいと思ったのは、俺だけじゃないね。
由紀もまんざらではないこと、俺は知ってたから、結構わざとしていたのは事実。良子も気づいていたンだな。すごい勢いで俺に迫ってきている。
何が気に入らないのかわからないし、放っておいても良いことなのにな。離婚する原因もわからないでもない。
「いや、別に私は何も・・・」
丁寧な言葉遣いで良子に返す。
彼女は少し落ち着いたように、溜息をつくわけ。
自分でやばいと思ったのかな、自分の席に戻ってまたワープロを打ち始めた。
次の日、由紀が休んでいるわけ。俺は何か、不安がよぎった。結局は取り越し苦労だったがな。どうやら法事があるというので、前々から休みを取っていたという。
いつものように事務室へ行き、由紀のパソコンをつけた。
昨日のことが悪いと思ったのか、良子が俺のそばに来て、画面を見ている。
ち、ちょっと近づきすぎじゃない????俺がしていたように顔を近づけてくる。・・・やばい急接近。何、俺はドキドキしているんだ?女の香り。それも年上の。
由紀も年上なんだけどね。良子はもっと上。
「あなたはいつもこうやって近づいてたのよ」良子のきついセリフ。
「もっと近づくよ」
そう良子が言うなり、許可も得ずに俺の頬にくっつきやがった。
俺はフリーズ。彼女もフリーズ。時間が止まってたな。気がついたように少し離れて、彼女の方を振り返ったら、俺にキスしたんだよ、マジに。あり得ないことだ。
二人で何が起きたのかわかってなくて、しばらく放心状態。
で、確かめるように、また彼女からのキス。
拒否する理由も見つからない俺は、そのまま受け入れてんの。
事務室の隣は職員室だぜ。曇ガラスではあるけど、人影が映るわけだ。
冷や汗が出ると同時に、淫靡な雰囲気に二人でソワソワ。
俺は誰かが入ってくる前にここを出たかった。
パソコンをそのまま切っちゃって、立ち上がろうとしたら、
良子が俺の手を握って「そんなんじゃないんだけど。そんなんじゃないんだけど」って繰り返しながら俺に謝るんだよ。なんか、かわいくてさ、その姿が。
「大丈夫だから」って言って俺は事務室を出るとき、振り返って微笑んだんだ。
俺も情けない男だよな。キスされたぐらいでなびいているわけだから。
でもさ、ああいう状況の中で、突然されてごらん。なんかわくわくドキドキモンだよ。で、次の週からは、なぜか由紀には近づかないようにしている自分がいるわけ。
俺の中では完全に良子を意識してるんだよね。
由紀も良子の言葉にビビっているみたいで、素知らぬ顔をしている。
しばらくはキス以上の進展ーもなくて、中間試験の追い込み。
動いたのは6月に入ってから。
事務室では生徒達の中間考査の点数を打ち込みしている。
俺のクラスの数学の点数を報告しに、事務室へ赴いた。
由紀の席が空いている。「今日、休み?」って良子に訊いたら、昨日から熱っぽくて、とうとう今日は休んだとのこと。
梅雨に入って、いきなり涼しくなったりしていたから、実は俺も調子が悪い。
元気いっぱいなのは、良子ぐらい? 他の講師達も確かに元気ないような・・・。低気圧のせいか?
その日、帰りがすごい土砂降りになってて、自動車で来ている講師はすぐに帰れたんだけど、俺は自転車だったから、少し雨が弱まるまで待っていたんだ。
・・・一人かぁ・・・事務室に入って、テレビをつけた。もう、11時を回ってる。ガチャ、職員室のドアの音。事務室から出ると、良子が雨をはらいながら立っている。
「忘れ物、忘れ物」 傘だてに傘を置いて、バッグを椅子にかけてる。
事務室の入り口にいる俺をよけて、自分の机のところに行ったんだ。
「ここに置いてあったあれ、知らない?」良子が俺に訊くんだよ。。
「あれってなに、あれって」
何のことだか確かめようと、良子のそばに行ったんだ。
・・・・・・・・ 良子がいきなり俺に抱きついてきたんだよ。
ふつう、反対だよな、こういうことって。ひそかに俺が由紀に対してやろうとしていたこと・・・。 あちゃぁ、先をこされてしまったか・・・。
俺も馬鹿だから、すんなり受け入れてんの。拒否する理由もないモンな。
良子に恥をかかせることもないし。
どっかのエロビデオみたいだろ?俺もそう思うよ。
「忘れ物のあれってなんだい」って俺、訊いたんだよ、意地悪く。
しばらくぶりのキスの忘れ物、だってよ。ふざけろよ。
じっとしている二人。俺から切り出す。むさぼるようなキスを浴びせる。
良子はすんなり受け入れているから、次の段階へ進むことにした。
ブラウスのボタンを外して、ブラジャーの上からおっぱいを出して、指でつまんだんだ。・・・火がついちゃったみたい、それだけで。
離婚してから、男ひでりが続いていたのかな?完全に「女」になってた。
これがまた、実にかわいいんだな。年上でも。
エロビデオの世界を実際しているような錯覚。でも、あるんだよな、男女の世界では。あながち間違いではないよ、エロビデオは。そのとき、俺は思ったね、まじに。
スカートの中に手を忍ばせると、一瞬強ばる仕草があったが、腰の辺りまでたくし上げて、おしりからストッキングを下ろし始めたんだ。
別に抵抗することもなし。言葉もない。細い声が漏れているだけ。
キスをしながらパンティの中に手を入れたんだ。
良子の息が次第に荒くなってきて、腰が勝手に動き始めてるんだよ。
俺はその「女」という姿に異常に興奮を覚えたよ。(次回へ続く)