前編は以下のとおり
女の子の社長
女の子の社長 続編

電話を切ってから、ベッドに潜って深く考え込んだ。
会社を運営するには少ないけど、麻耶の会社はこれで当分は乗り切れるだろう。
麻耶が俺からの電話のことを誰かに話すと、
俺の口から契約のことが漏れるかもしれない。
俺は、はっきりと麻耶を抱きたいとは言っていない。
麻耶が断って、失うものは俺の信用だけだ。
表面上は大人の対応をしてくれるだろう。
次の日の夜に電話があった。
画面の出た麻耶の名前を見て、心臓をわし掴みにされた。
短い挨拶のあと、いつものように会話が続かない。
「…どうするの?」
「いつ行けばいいですか?」
きた!
「土曜日の9時。早いかな、遅れても大丈夫だけど。現金で用意しておくよ」
「はい。あの…ありがとうございます」
俺のことを軽蔑しているような感じはなく、ホントに感謝しているようだ。
「大丈夫?何するか、わかっているよね?」
「はい、大丈夫ですよ」
アハハと軽く笑いそうなくらいの、余裕があった。
開き直ったのか。今回の会話は短かった。
週末までに定期を解約して、土曜日を迎える。駐車場は空けておいた。
時間ぴったり9時に、独特の低いエンジン音がして、俺は部屋を出た。
ドアが開いてバッグを片手に出てくる麻耶。
片方の肩が大きく露出した淡い色のサマーニットの下には
濃い色のタンクトップ。
デニムのショーパンから伸びる脚は白くて細い。
初めて見る私服だった思う。隠れ巨乳なのか、補正なのか。
「この服、昨日、買いました」 部屋に入って第一声。
嬉しそうな笑顔で話し始めた。
部屋に入って狭い机に100円の紙パックのお茶。
横には封筒に入れた万券200枚がスタンバイOK。すごい光景だ。
「昨日、みんなにボーナス出して5時に解散してバーゲンに行きました」
「もうお金、無くなりました。だから、絶対に今日は○○(俺)さんの
ところに来ないとダメだったんです」
俺の口からは「へー」とか「そうなんだ」しか答えてない。
目の前には麻耶の白くて華奢な肩。
よく見るとサマーニットは透け感が強く、下に着たタンクトップも
胸元まで大きく空いていて谷間がチラチラと見える。
「少なかったのですが、ボーナスを出せてみんな喜んでましたよ」
「ふーん」
「私も久々に自由に買い物できて嬉しかった。ありがとうございます」
「そうなんだ」
「閉店時間までいたんですよ」
ずっとこんな感じ。いつになく饒舌だったけど、一通り喋ると沈黙した。
一方的に喋っていたのは、緊張していたからか。
お互いお茶ばかり飲み始める。
俺は200万の入った封筒を麻耶の前に持っていた。
両手に持って頭を下げる。麻耶は俺をじっとみてる。
たぶん、覚悟はできるのだろう。目が本気だし。
でもね。目の前に付き合ってもいない彼氏のいる女がいて、
顔見知りというにはもっと親しくて、仕事を頼む関係で。
実際に手の届く距離にいて、ガバって押したおせる?
かわしいし、好きじゃないと言えば嘘になる。
頑張って会社を切り盛りしてる子が、お金で買われちゃう。
すごくかわいそうになってきた。でも、抱きたい。
いただきま~す、としたいけどそこで食べたら自分の品位もおちる。
そんな葛藤。
ここまでくるためにいろいろ考えたけど、実際どうすればいいかわかんない。
生身の女の子を前にして俺は何にもできない。
初めて風俗に行って嬢を目の前にするとこんな感じなんだろうか。
風俗いったことないけど。
チキンな俺を見つめてくる麻耶は、少し余裕が出てきたのだろう。
「何もしないのですか?帰っていいですか?」
「ん~、まだ明るいし…。あ、お金は貸すだけだよ」
「大丈夫、働いて返しますよ」
全然、ダメ。普通の会話している。
お金を使い切って追い込んで行動する麻耶と、
頭の中で考えてばかりで手が出ない俺。
学生ベンチャー出身の社長と、民営化した会社のヒラ総務。
時計を見ると9時20分。
とりあえず、麻耶の横に並んで抱きよせた。
最初は緊張に体を固くさせたけど、こっちを見る。
「ベッドでしませんか」
ムードもないけど、二人で服脱いでベッドに入った。
ミントの色(?)、薄い緑に黒いレースの入った下着。
シャワー入ってきた、と無理に笑う。
キスは顔を背けられ、胸触ろうとしたら手を掴まれた。
「早くして…」
体を固くさせて緊張が伝わってくる。(次回へ続く)