前編は以下のとおり
顔立ちは綺麗系、文系女子
このときは、何が何でも言葉で松原さんを丸裸にするつもりでいた。
「でも、2年も付き合っている彼氏なんだからセックス上手でしょ?」
「え~……よくわかりませんよ、そんなこと」
「なんで? だって体の相性良くなきゃ、2年も持つわけないじゃん」
「う~ん、私、彼が初めてだったから……」
「!!!」
マジで!? こんな綺麗な顔してて、理想の微乳で、そのくせ、腰から尻のラインは思いのほかふくよかな女が、26歳まで処女!!!???
ってことは、29の今でも男を一人しか知らないとな。
しかも、掘り下げると、彼のセックスもずいぶん未熟らしい。
もともとセックスの回数が少ないのと、客観的にだいぶ早い。
もちろん、松原さんはイクっていうのがどんなことか想像も付かないようだ。
婦女子特有の、基本的な男性恐怖に加え、セックスでは受け身なので、男を射精に導いてやることがセックスだと思っている。俺は超萌えた。
松原さんの返事、実際はこんな明快じゃなくて、すげー解読に苦労したことは察してくれ。
「松原さん、フェラチオで彼を喜ばせている?」
「えっ……時々」 してんのかよ!!
「どんな避妊しているの?」
「彼が抜いて出します」
「どこに?」
「お腹とか……背中とか」バックもやんのか、こんな華奢な身体で(ハァハァ)
「顔にかけたりする?」
「一度されたけど、髪の毛について大変だったので、それっきりです」
「でも、かけたがるでしょ? 男なんだから」(んなわけあるか)
「……口と手で受け止めます」おれがイキかけています。
「飲んであげるの?」
「そういうこともあります」
もうだめだ。俺の股間がネクストバッターズサークルに入りましたよ。
俺、壊れた。
「松原さん、俺ならそんなコトしないな」
「どういう事ですか?」
「俺ならそんなユルい犯し方しないって」 ここから延々、俺が松原さんを抱くとしたら、ああする、こうすると、ソフトSMの風情を講釈。
松原さんみたいな子は、手首を縛って自由を奪って、後ろから激しく犯すと、感じるようになるんだよ、みたいな。俺、かなり必死モード。
松原さんも、酔いなのか恥ずかしいのか、小さくすぼめた肩に首を引っ込めるようにして硬直しながら、伏していた目を時々上目遣いにして、潤んだ目で俺を見ては呼吸が小刻みになっている。
決めた。今夜、この子を犯す。
「じゃあ、行こうか」
「えっ!? えっ!?」
腰を抱くようにして出口を促し、クレジットで支払いを済ませ、店を出る階段に出ると、
「あ、あの、困ります、本当に……」
つべこべ言わせる前にキスで口を塞ぐ。
うわ、すげ~やわらかい……
少しポテッとした唇が、細面の顔の中でチャームポイント(井上和香ほどじゃないけど、顔の大きさに対してボリュームがある)だったから、むさぼり付いたとはまさにこのこと。
苦しくなって松原さんの漏らす酒臭い吐息に頭が痺れ、口の中に舌を突っ込んで、唾液を吸ったり流し込んだり、2分くらい彼女の舌を追い回して口の中を舐めまくった。もう、顎までよだれが垂れるほど。
その間、左手は彼女の柳腰をがっちりと抱きしめ、右手は尻をわしづかみにしていたよ。チノパンの上から尻を揉みに揉みまくって……
「だめ、だめなんですっ!!」
そう。マジバナで生理中だった。
俺の手がナプキンに掛かってしまって、彼女が我に返ってしまった……
さすがに生理でセックスは強要できない。
俺は涙を呑んで帰宅し、デリヘルを呼んだよ。「黒髪で痩せ身の子!!!」
さすがに翌日から、松原さんはおれを避けるようになった。もちろん、仕事上はいままで通りだけど、薄い幕が掛かったみたいな距離感が出来てしまった。
俺も、やり過ぎだったとは思うし、ちょっとガツガツしすぎてみっともなかったし。半ば、成り行き任せでその週をやり過ごした。
ただ、退職をそろそろ会社に打ち明けないとまずいと思い始めていたころ。
松原さんに話したら完全に終わるだろうな~というのが引っかかって、かなりイライラしていたんだな。自分勝手な話だけど。
そして例の居酒屋から1週間くらい経った平日、松原さんが作製した印刷データのトラブルがあり、俺と彼女は遅くまで残業になった。
残業は珍しいことではないし、フロアに2人だけなんてこともしょっちゅうだったから、別に誰も気に留めない。
俺は何もすることがないんだけど、消灯と施錠はかならず役職者がしなければならないから、東風麻雀をしながら松原さんが終わるのを待っていたわけ。
21時を少し廻ったくらいのところで、
「終わりました。すいません、こんなに遅くなって」
「ん、ああ、いいよ、俺がミスった時は、松原さんが残ってくれるんだし」
「本当にすいません。お腹減りましたよね」
何かがキレる。
「……ん、ああ、そうだね。じゃあ、松原さんを食べて良いかな?」
「それってセクハラですよv(目は笑っていない)。さ、帰りましょう」
彼女はドアの方に行ってしまった。やれやれ。
俺は消灯して、フロアの施錠チェックをしてから、松原さんが待っているドアの施錠を……
「あ、すいません、忘れ物です。ハンコ、ハンコ……」
会社の提出書類に押す実印らしい。
電気の落ちたフロアの奥の方に駆けてゆく松原さん。
ここから飯→セックスって、ないよなあ……。あの時が異常だったんだ。
酒の勢いもあったし。かなりションボリしながら松原さんを待っていると、「○○主任、パソコンの電気が落ちていないですよ」
本当だ。モニターは落ちているけど、本体がフリーズしている。
フロアはぶちぬきになっていて、各部署がデスクで島を作っているような感じ。
だだっ広くて無防備なのでだけど、この頃、ちょっとしたレイアウト変更があって、俺のデスクの近くに、パーティーションで切った小部屋が出来たんだな。
簡単な応接を置いて、打ち合わせとかに使うような。L字型になっている突出部だったので、すこしフロアから切り離された孤立感があった。
俺は、パソコンのモニターを確認するため、彼女の後ろを通りかかったとき、反射的に抱きしめ、強引にこちらを向かせていた。
計算とか、そういうのじゃない。もう、全脳がそう命じていた。機械的な反応だったと思うしかない。
ただ、暗い部屋で、窓から指す外の灯りで照らされる、松原さんのうなじとほほがすごく白かったのはくっきりと覚えている。
「えっ!! ちょっと、ホントに、!? え、ちょっと、やだっ! やだって!!」
俺は片手で松原さんの腰をがっちりホールドし、右手を首に巻き付けて顎を掴み、キスをして声を塞いだ。誰も見ていない。
俺は松原さんを抱きすくめた姿勢のまま、仮応接に彼女を引きずり込んだ。(次回へ続く)