俺が高校生の時の話。まだ若かったよ、あの時は。
俺は高校まで、特に好きな女ってのはいなかったわけだ。
でも、そんな中、やっと俺にも春がきた。
顔も結構可愛くて、スタイルはそんなに良くないけど、
とにかく真面目で優しくて笑顔が素敵な女の子だった。
仮に「ナオミ」としておこうか。
俺は日を重ねるにつれ、彼女に惹かれていった。
でも、あの時はそんな度胸もないから
告白もできずに歯痒い毎日を送っていた。
ちなみに、俺とナオミは別のクラスだったが、
毎日欠かさず雑談して笑い合った仲だった。
彼女のクラスには、当時、俺が大嫌いだった男がいた。
何故嫌いだったのかは思い出せない。
とにかく嫌いだった。名前を「リョウタ」としておこうか。
ある日、ナオミも含め俺と俺の男友達1人と女友達1人で
遊びにいくことに。
まぁ、ガキの財力だ、渋谷でボウリングしたり・・その程度だ。
で、昼飯をファーストフード店で食ってたとき、偶然ってあるものだ。
リョウタとばったり会ったんだよ、
こっちはすっげぇ気分良かったのに。
しかも、リョウタのやつ俺とナオミの中間の席に
割り込んで座ってきやがった。
しかも俺に「どけ」って言いながら
俺の肩を押して無理やり割りこんできた。
そこで怒ってやろうかと思ったけど、大人気ないから止めておいた。
ナオミのやつも偶然あったリョウタと笑顔で話してやがんの。
リョウタのやつ、顔は結構カッコイイし、スタイルもいいから
女の子にはモテるんだよね。
ナオミももしかしたら多少リョウタに惹かれてたのかも・・・。
んで、リョウタのやつが俺らより先に店を出たんだよ。
俺らも、リョウタ退店から1時間くらい後に店を出て、そこで解散だった。
・・・・が。
店を出ようとした時に、テーブルの上に何やら音楽プレイヤーが置いてある。
見覚えのあるやつだった。リョウタのだ。間違いない。
ナオミもお人よしだから、絶対こう言うだろうと思っていたけど・・・
「あたし、あの人の家近いから届けてくるよ^^」
なんて言っちゃってんの。冗談じゃねぇ。
もちろん俺がすかさず
「いや、いいよ。俺が行くよー」
本当はゴミ箱にでも捨ててやろうかと思ったけど、
俺もそこまで鬼にはなれなかった。
渋々だがリョウタの家まで足を運ぶことになったが、
一度どうしても自宅に戻らなくてはならない用事があったので一度帰宅。
再度渋谷経由でリョウタの家まで行った。
とは言え、時間は夜の8時くらい。
リョウタの家は両親とも働いてるから
夜11時くらいまでは、あいつ1人で家にいるのは知っていた。
ちなみにアパートの一部屋だ。
8時30分頃にリョウタの家の前に到着。
チャイムを鳴らそうと思ったその時だった。
「・・・・ん・・ダメだよ・・ねぇ・・。」
なんだ?リョウタ以外に誰かいるのか?
まぁ・・空耳かもしれない。俺は息を殺した。
周りは静かな住宅街だ。誰もいない。
ドアの前に立ち尽くした俺、そっとドアに耳を当てる。
「・・・おい・・だから・・・そうだって!」
リョウタの声だ、間違いない。
「んっ・・あぁぁんっ・・でも・・誰か来るよぉ・・」
まさか・・・・この声。
神様、どうか俺の予感を的中させないでくれ。
そんな思いで手に汗を握った。
まさかこんな状況でチャイムを鳴らせるわけがない。
窓がある。そっと中を覗く。
よく考えたら怪しい不信人物だった、俺は。
そこには仰向けに横たわるナオミと
上にのしかかるリョウタの姿があった。 (次回へ続く)