会社の同期で、磯部君っていう男がいたんだ。私も彼も25歳ね。
同期と言っても仲は最悪で、会議ではいつも意見が合わず言い争いばっか。周りには「犬猿の仲」とまで言われてた。
磯部君は掴みどころのない性格で、いつも何を考えてるか分からなかった。
でも頭はキレるし、見た目も結構良かったから女の子にも結構モテてたよう。
そんなある日、私はいつものように一人で残業していると磯部君が上のフロアから降りてきた。指が切れちゃった、絆創膏ちょーだい、と。
少しイラっとしたけど、絆創膏を貼ってあげた。
それからしばらく世間話をしていた。 が、和やかムードもつかの間。やはりひょんな事から言い合いになった。
そしていつものように悪態をつく私に磯部君は、「お前、本当にかわいくないな、そんなんだと彼氏に逃げられるぞ」と冗談っぽく言う。
実は私、長年付き合ってた彼氏と別れたばかりだったんですorz
だから正直、このタイムリーなツッコミは本当に痛かった・・・。いつもなら「うるさいな~」で返すのに、思わず泣いてしまった。しかも大嫌いな磯部君の前で。
磯部君はまさか私が泣くなんて思っていなかったらしく、かなり驚いていた。
屈辱的な気分が襲ってくるも、涙がなかなかとまならくってヒックヒック言ってた。多分2、3分くらいグスグスしてたと思う。
すると磯部君は何を思ったのか、急に近付いてキスしてきた。
そしてすぐに離れて「じゃーな」って言って帰ってた。
ポカーンとする私・・・。帰りの電車の中で思い出し動揺して、テンパってしまった。
次の日からは磯部君を意識しまくりだった。こっちに来るたび、ドキドキしてた。
でも顔には出すまいと必死に平静装ってたよ。大嫌いな磯部君を意識するなんてありえないし!!と思ってたから。
今思うとこの時完全にハマってたんだなぁ・・・自分。
しかし、1週間たっても2週間たっても何の変わりもない。磯部君は特に何も言ってこないし、いつもと同じ。 私はあれ?と思い始める。
あの日の出来事は・・・夢?蜃気楼?勘違い?と、少しダウン気味になる。
そしてキスしてから1ヶ月たったある日事件?は起こった。
あの日と同じように、磯部君が上から降りてきた。勿論フロアは2人きり。
口から心臓が出そうな位ドキドキしてたけど、何とかがんばった。磯部君はいつもと同じ口調で「よう」とか言ってる。
私も「よ、よう」と言ってみたものの声がうわずってた(つд-。)
続けて「何?」と聞いた。正直、この時かなり期待してたと思う。
しかし磯部君が言った言葉は・・・。
「今から○○さん(新人でカワイイと評判の女の子)と二人でご飯行くけど行く?」
私「は?(゚Д゚)」
磯部君「だからご飯・・・行く?」
私「・・・・」
磯部君「聞いてるんの?おなか空いてない?」
私「行く分けないじゃん!!仕事あるし。だいたいそこに私がいる意味あんの??」
磯部君「・・・。あぁそっか。まぁいいや、ごめんな。おつかれさんー」
颯爽と帰って行った。
「ふざけんなっっっ!!」武者ぶるいしたのはこの時が初めてだったと思う。と同時にまじで好きになったんだなぁと実感。
その夜はすごく泣いたよ。自分でもビックリするくらい。
でもよく考えたら全部自分の勘違いだったんだよね。結局は。
何舞い上がってたんだろう。キスくらいで。そう思ったら凄く恥ずかしくなってきてね。
だから「あいつは外人!!あいつは外人!!」って呪文のように唱えた。
でもやっぱり気持ちがついていかなくって、磯部君が近くにいるとぎこちない態度になちゃったりしてた。そんでまた1ヶ月くらいたって、磯部君が下に下りて来た。
磯部君の話は、他愛も無い話ばっかりだった。仕事がどーとか。会社がどーとか。
いい加減イライラしてきて、結構冷たく「仕事あるからもういい?」って言っちゃったんだ。
したら「何か怒ってんのか?最近そんな態度ばっかりだな。感じ悪い。」って言うのよ。
何を言うか!!と思うも、嫉妬してました何て言えず「別になんでもないよ!!」としか言えない。素直になれない自分がいた。
で、また言い争いに発展。そして
磯部君「もしかしてお前、俺の事好きになった?」
私「・・・。なってない!!あんたなんか嫌いっ」
磯部君「じゃーなんで最近ずっと俺の事見てたの?」
私「見てない」
磯部君「本当の事言えよ」
私「うるさい、きらいきらい!!大嫌い!!」
連呼してたら磯部君がキレちゃいました・・・。
私の腕を凄い力で掴んで、奥の資料室へひっぱり込む。いつもの磯部君と違う、真剣な顔。
私の目の前に立って、上から見下してる。かなり怖い。
言い過ぎた?もしかして殴られる・・・?と震える私。
「なに・・・?」と言った瞬間ブラウスのボタンひきちぎられた。 (次回へ続く)